三木久子2

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「出張……ですか」 「そうなんだ。手当もきちんと出るから、頼むよ」 その話が来たのは、林さんと別れて出社した日の事だった。 林さんが物凄くやつれた姿で玄関から出てきたのが見え、彼に挨拶をした日の事だった。 やつれていた原因は多分、あの箱の事なのだろう。 きっと彼もあれをどうにかしようとしたんだ。捨てようとしたんだ。 あのやつれた様子からして、たぶん相当頑張ったんだろうな。 でも結局、箱は帰ってくる。扉の前までやってくる。 何度捨てても、どういう訳か扉の前に置かれる。 「分かりました」 「ありがとう。助かるよ」 やつれた林を見かけ、少しだけ話をした日。つまり今日。 出張の話が来た。泊り込みで別の部署に行かなくてはならなくなった。
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