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匂いに誘われ、きょろきょろと辺りを見回すと、カウンターの一番隅で一人の店員さんが手招きをした。そこに俺はすぐさま走り、差し出されたスナック菓子を貪った。
…あれからどれくらいの時間が過ぎ去っただろうか。
最初見に来た映画はとうに終わり、胃の上映されているラインナップはあの日とまったくの別モノだ。
一応そのくらいのことは判るけれど、もう、映画なんて見たいとも思わない。
俺の目当ては、一日に二度もらうことができるあのスナック菓子だ。
映画館から出ることもできず、行き交う人達と喋ることも、接触することすらできない暮らしは退屈だが、その何もかもはスナック菓子を食べれば忘れられる。
そういう奴はそこそこいるようで、俺以外にも、映画館のあちこちでじっとうずくまっている奴は、みんなスナック菓子を待ち侘びている連中だ。
映画なんかどうでもいい。人との関わりも、自分が今生きているのかどうかさえどうでもいい。
一日二度のスナック菓子。それだけが今の俺の総てだから。
秘密のスナック菓子…完
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