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次のページは紙が少しだけくしゃくしゃになっていた。
それと同時にところどころ字が乱雑になり、滲んでいた。
僕は読み始める。
『私達は沈みゆく月と登りくる太陽の共演により鮮やかに彩られる空の下、手を繋いでいた。
「ねえ、レン」
「何だい?」
私は意を決して、口に出す。
今が最適だと思ったから。
そして、今がリミットだと思ったから。
「私ね……あなたのことがとっても好き。とても好き。愛してる。
あなたは私の家にいつも来てくれたわ。旅が終わって疲れているだろうに私のところに来て、いろいろな話をしてくれて。
私、とっても嬉しかった。
昔からあなたと私は一緒だった。幼なじみだったものね。
昔から想ってたの。
当然よね。私を縛り付けるこの白い牢獄は、あなた以外の友人を私に与えてくれなかったもの。
私はあなたと一緒にもっと遊びたかった。旅に出たかったわ。
でも私のわがままをこれ以上、聞いてもらうわけにはいかなかったから、我慢してた。
ごめんね。こんな形で言うなんて私、どうかしてるよね。支離滅裂だしね。
ごめんね。重くって迷惑だよね。レンは優しいから変に罪悪感とか感じちゃうよね。
誤解しないでね。ここに書いてあることはレンに対する私の感謝の気持ちなの。
本当にいつもありがとう。
お父さんとお母さんにはいつも感謝してるけどね、私はやっぱりレンに一番支えられていた気がするの。
この白い部屋に閉じ込められていた私に世界をくれたのは、あなた。
何も知らない私に愛という感情をくれたのも、あなた。
私はもしかしたらあなたのくれたものでできていたのかもしれない。
この小説みたいに。
真っ白な私にあなたは色をくれたの。
今、小説の中の私達が見上げている美しい空のように。
ありがとう、レン。
私はあなたに会えて本当に良かった。
本当は口で言いたかったけど……私はもう限界みたいだから。あなたが旅から戻るまで持たないと思うんだ。
最近の元気はね、一瞬の輝きっていうのかな。
たぶんね、最後の元気だったんだね。』
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