旅人の物語

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 僕達はいろいろな話をした。  僕はいろいろなところに行ったから話のネタには困らない。 「火山から血のように赤いマグマが零れ落ちるんだ。暗雲が浮かんでてね、ときどき雷が落ちてた」  魔物と戦った話もした。 「一緒に旅していた人がね、ギルドの凄腕の人でね。僕ひとりだったら逃げ出してたに違いない魔物を一太刀さ。稼いだ金で、しばらくは豪華な食事が続いたんだ」  話が進むにつれエリシアの目は輝き、彼女はよく笑うようになった。  それと同時に僕は、エリシアが元気になっていくのを感じていた。 「次はどこに行くの?」 「南さ。海があるんだ」 「海って青くてしょっぱいのよね」 「そうなんだ。たくさんの魚が泳いでる青い楽園さ」 「青い楽園……ならここは白い地獄ね。ああ、いつか行きたいなあ、海」 「エリシアなら行けるさ。最近、何だか元気になってきてるみたいじゃない?」  僕はベッドの上で、いい表現が浮かばないからとしかめっつらのエリシアに言った。 「え? そう? やっぱりレンもそう思う?」 「うん」 「そっかあ……お医者さまは大人になる前に治るって言ってたからなあ。私、もうすぐ大人ってことなのかな?」  エリシアが長い髪を揺らして笑う。 「そうだよ。エリシアはもう大人になるんだ。外に出られるようになったらリハビリしないとね」 「うん」 「完成したら見せてね、その小説」 「うん」  エリシアの満面の笑みに、僕もつられて笑った。
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