1人が本棚に入れています
本棚に追加
僕達はいろいろな話をした。
僕はいろいろなところに行ったから話のネタには困らない。
「火山から血のように赤いマグマが零れ落ちるんだ。暗雲が浮かんでてね、ときどき雷が落ちてた」
魔物と戦った話もした。
「一緒に旅していた人がね、ギルドの凄腕の人でね。僕ひとりだったら逃げ出してたに違いない魔物を一太刀さ。稼いだ金で、しばらくは豪華な食事が続いたんだ」
話が進むにつれエリシアの目は輝き、彼女はよく笑うようになった。
それと同時に僕は、エリシアが元気になっていくのを感じていた。
「次はどこに行くの?」
「南さ。海があるんだ」
「海って青くてしょっぱいのよね」
「そうなんだ。たくさんの魚が泳いでる青い楽園さ」
「青い楽園……ならここは白い地獄ね。ああ、いつか行きたいなあ、海」
「エリシアなら行けるさ。最近、何だか元気になってきてるみたいじゃない?」
僕はベッドの上で、いい表現が浮かばないからとしかめっつらのエリシアに言った。
「え? そう? やっぱりレンもそう思う?」
「うん」
「そっかあ……お医者さまは大人になる前に治るって言ってたからなあ。私、もうすぐ大人ってことなのかな?」
エリシアが長い髪を揺らして笑う。
「そうだよ。エリシアはもう大人になるんだ。外に出られるようになったらリハビリしないとね」
「うん」
「完成したら見せてね、その小説」
「うん」
エリシアの満面の笑みに、僕もつられて笑った。
最初のコメントを投稿しよう!