君の脚は関係なく思い出は紡がれる

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 それからというもの、俺と泰生、それと綾香、なぜか関わる機会が増えた細谷さん。四人で遊ぶ事が多くなった。  泰生が手術でカナダに行く六月のその日まで、遠足に行ったりバーベキューをしたり、学校で勉強をする事もあれば細谷さんの家で勉強会をした事も。俺と泰生が先生をやり、絶望的な綾香と細谷さんに教えたりなんかしていた。  たった二ヶ月程度の付き合いだけど、俺たちは十分に打ち解けていた。泰生のカナダ行きを寂しく感じるほどに―― 「障碍者が嫌いって言ってた貴志も、泰生ちゃんの事は嫌いじゃなくなったみたいね?」  そう聞いてきたのは綾香だった。泰生がカナダに行く前日の下校時の事。二人きりの瞬間にそんな事を言い出した。 「まあ、あいつが色々頑張ってるのを見たら……な」 「もしかして好きになっちゃった?」 「ば、ばかか! 俺の好み知ってるだろ?」  とは言え、好感を持っているのは紛れもない事実だった。 「そうね。自他共に認める脚フェチだったわね。だったら……」 「ん? なんだ?」 「ううん。なんでもない。もしかしてだけど泰生ちゃんにも脚の綺麗な子が好きとか言っちゃってる?」 「あー……。言ったかもしれない」 「ふーん」 「なんだよ」 「べっつにー。……泰生ちゃんの手術、成功したらいいね!」 「ああ、そうだな」  そうして迎えたカナダ行きの日――
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