君の脚は綺麗だ

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 ただいまを言わない泰生は俺の姿だけ確認すると顔を伏せた。久しぶりに顔を会わせて何を話せばいいか分からないんだろうか。 「綾香と細谷さんも来てくれてるんだけど、今ちょっとトイレに行ってて。すぐ戻ってくると思うよ」 「……」  まだ表情が変わらない泰生。二人がいない事に対して不機嫌になっていたって訳じゃないみたいだ。じゃあなんだろう…… 「長旅で疲れただろ? 美味しいカツサンド売ってる店があるから行こっか」 「……」  おなかが減っている訳でもない……と。 「た、貴志くん。あの……あの……」  ようやく口を開く泰生。難しい顔をしていた理由をやっと教えてくれる気になったのだろうか。 「あ、そうか! お願い! 出国前に言ってたお願いの事だろ!」  手術が成功して帰ってきたらお願いがあるって言ってたやつ。それを覚えてるかどうかってのかな? 「手術……失敗……しました」  消え入りそうな声で言った一言。  手術が失敗したという報告。  変わらず車椅子に乗っていて、お母さんに押してもらうでもなくここまで自分の力で動かしてきた車椅子。  泰生の全身に力が入っているのが分かる。あの日教えてもらった時のように、その細く白い足もプルプルと震えている。 「ホントは、ホントは自分の足で歩いてみんなに飛びついて抱きしめ合いたかった……。なのにこんな、こんな醜い脚のままで……」  涙をボロボロと流し、まるで懺悔するかのように自らの脚を悪く言い……。 「泣くな、泣くなって」 「だって……こんな醜いままで」 「違う! 醜くなんて無い!」 「でも……」 「聞けよ!!!!」  俺はついに大声で叫んでしまった。空港のロビーが一瞬静かになる。ああ、これで泰生にも伝えたい声がちゃんと届く。
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