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俺、芦屋貴志は脚フェチだ。三度の飯より綺麗な脚を見ている方が良い。高校二年の始業式。出会って一年そこそこの学友の間でさえ有名な話。男女問わず俺の性癖は知れ渡っている。しかし、俺の嗜好は一般に好まれるそれとは少し趣きが違う。
一般的に綺麗と言われる脚は……そうだな。すらっとまっすぐで細く、白くキメ細かい肌。皮下脂肪が少なく、それでいて骨ばっていない様子。俗にほっそり美脚と呼ばれるもの。特に女性目線で目標とされることが多い美脚の形態。
他にはむっちり美脚と呼ばれる適度な皮下脂肪と筋肉を持ち柔らかそうな質感のもの。またオーバーニーソックス、サイハイソックスなどで太ももの肉が食い込んでいる様子が見て取れるなどが良く言われる基準となったりする。これは特に男性から好かれるタイプの美脚形態だろう。
そんな世間一般に綺麗と言われる美脚は、実のところ俺の趣味とは若干異なっていたりする。いや、正確に言えば好きである事には変わりないので異なっているという表現はおかしいかもしれない。何が言いたいかと言うと、目の前で美脚アピールをしてくる女には興味が無いという事だ。
「芦屋くんって脚フェチなんだって? じゃあさ、私の事なんて大好きでたまらないんじゃない?」
一番後ろの席に座る俺。その目の前の机に座る女生徒。短いスカートでもパンツが見えないように計算されたであろう角度で脚を組んでいる。
彼女のその教科書に載っても良いほどのほっそり美脚は女性達から羨望の眼差しを浴びていることだろう。さらに、これ見よがしに手に持っているファッション雑誌には細谷愛美の美脚特集が表紙を飾っている。そう、今俺の目の前にいる女生徒本人の特集だ。
「細谷さん。確かに君は素晴らしい美脚の持ち主だ」
「そうでしょそうでしょ~」
「でも、俺が求める美脚は君の作り物のような脚じゃないんだよ。やっぱり見ていて美しいのは機能美を兼ね備えた脚だね」
「つ、作り物? 機能美……?」
「そう機能美。走ったり跳んだり重い物を持ち上げたり。その人の人生が詰まった鍛え抜かれた脚! 筋肉が多ければ良いって訳じゃない。何の為に鍛えたのか、鍛えた末に何を得たのか。その脚に詰まった物語! それを含めて綺麗なんだ」
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