8人が本棚に入れています
本棚に追加
転生者
ポテンッと。
真っ白な毛に覆われた丸い形のボールが、紙で作られた箱の中に着地する。
「ゴロゴロー!」
しばらくコロコロと転がったそれは歓声を上げて、箱の中を転がっていた。
しかし、そのしばらくの『間』の後、やや不満そうな声を上げ始めた。
「ゴロゴロー…。」
静止したままで、何やらプルプルと震えだした『それ』。その姿は、一見すると、真っ白な唯の毛玉である。
しかし、その上に開かれたつぶらな瞳は赤く、口は獣の形をしていた。
「ゴロッゴロ!ゴロゴロォ!」
そうして、叫ぶ毛玉は静止してからというものの、動く様子は全く無い。
ダンボールハウスである箱の中で、隅に置かれた赤い石にも見向きもせずに、毛玉はしきりにその身を震わせていた。
「ゴロゴロ!ゴロゴロ!ポカポカ!ゴロゴロー!」
何とも悲痛な叫びが箱の中で響く。
しかし、それでも動く事は叶わず――程なくして眠りに落ちた毛玉は、何かの音で目を覚ました。
《――きダンジョンマスターの登録を確認。設定を開始します。》
「ミャ?」
響いた機械質な声に、毛玉から不思議そうな声が発せられる。
ブゥンと響く、微かな振動が、空気を震わせて鳴いた。
その様子に毛玉が目を瞬かせていると、再び声が響く。
《設定を完了しました。新規マスターの精神と知能が低い為、自動防衛モードを展開します。》
「ミャァ。」
その音声に、何を思ったか、毛玉が一声鳴く。
その瞬間。
ぽよんっ。
何もない空間から、ゼリー状の物が降って沸いた。
「ミャァ?」
毛玉が不思議そうな声を出す。
それに、ゼリー状の物が小刻みに震え出した。
それを見ていた毛玉が何かに気付き――、
「テッテー!」
何やら歓声を上げていた。
最初のコメントを投稿しよう!