転生者

1/8
前へ
/16ページ
次へ

転生者

ポテンッと。 真っ白な毛に覆われた丸い形のボールが、紙で作られた箱の中に着地する。 「ゴロゴロー!」 しばらくコロコロと転がったそれは歓声を上げて、箱の中を転がっていた。 しかし、そのしばらくの『間』の後、やや不満そうな声を上げ始めた。 「ゴロゴロー…。」 静止したままで、何やらプルプルと震えだした『それ』。その姿は、一見すると、真っ白な唯の毛玉である。 しかし、その上に開かれたつぶらな瞳は赤く、口は獣の形をしていた。 「ゴロッゴロ!ゴロゴロォ!」 そうして、叫ぶ毛玉は静止してからというものの、動く様子は全く無い。 ダンボールハウスである箱の中で、隅に置かれた赤い石にも見向きもせずに、毛玉はしきりにその身を震わせていた。 「ゴロゴロ!ゴロゴロ!ポカポカ!ゴロゴロー!」 何とも悲痛な叫びが箱の中で響く。 しかし、それでも動く事は叶わず――程なくして眠りに落ちた毛玉は、何かの音で目を覚ました。 《――きダンジョンマスターの登録を確認。設定を開始します。》 「ミャ?」 響いた機械質な声に、毛玉から不思議そうな声が発せられる。 ブゥンと響く、微かな振動が、空気を震わせて鳴いた。 その様子に毛玉が目を瞬かせていると、再び声が響く。 《設定を完了しました。新規マスターの精神と知能が低い為、自動防衛モードを展開します。》 「ミャァ。」 その音声に、何を思ったか、毛玉が一声鳴く。 その瞬間。 ぽよんっ。 何もない空間から、ゼリー状の物が降って沸いた。 「ミャァ?」 毛玉が不思議そうな声を出す。 それに、ゼリー状の物が小刻みに震え出した。 それを見ていた毛玉が何かに気付き――、 「テッテー!」 何やら歓声を上げていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加