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自動防衛モードなる声の後、続々と出て来る何か達。
それは、緑色をした肌の子鬼だったり、固い毛皮を持つ狼だったり。
はたまた、羽根の生えた小人や、角を生やした一つ目だったりもした。
「ミャー?」
彼等は毛玉に挨拶をするように、一つお辞儀をしたり跪いたりしてから、箱の中から出て行く。
箱の入り口は、彼等が通るその一瞬だけ大きくなり、そして再び元の大きさへと戻っていた。
それらを眺めて、しばらくして何も出なくなったのを確認するかのように。
「ゴロゴロー!」
毛玉は突然、勢い良く転がって行った。
「ゴロゴロ!ゴロゴロ!ゴロゴロー!」
叫ぶ毛玉には、最初には無かったものが有る。
――両手だ。
短い前足というべきものが、しっかりと生えている。
どうやら、最初に現れたゼリー状のものから、何かヒントを得たらしい。
原理は不明だが、間違いなく毛玉には転がる時の為の加速器――じゃない両手が付いていた。
「ゴロゴロー、テッテーっ。」
はしゃいだ様子で毛玉が箱のなかを縦横無尽に転がる。
これに、機械質な声がけたたましく響き出した。
《危険!危険!侵入者が近付いて来ています!》
「ミャ?」
どこからともなく鳴り響いたその音に。
小さな毛玉がピタリと制止して、箱ごと持ち上げられていたのは、まさにその瞬間だった。
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