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「――何これ?」
見かけぬ質感の箱を手に持ち、少年が首を傾げる。
少年と言っても、まだあどけなさが残るという程度の、青年に差しかかろうとするくらいの年である。
革製の丈夫な衣類に、腰には短い剣。背中には弓と矢筒を背負い、その姿格好から、狩りに訪れた事が分かる者だった。
そんな彼は、森の中でたまたま見つけた茶色い箱を片手に、ただ首を傾げていた。
「何で、箱……。」
しかも紙製。
それが、森の中に忽然とあった。
もちろん、紙は水に濡れれば原型を留めていられなくなる。シワシワになったり、下手をすると溶けるのだ。
それなのに、森の奥深く――そんな所にあって、何故だか雨風に晒された様子もない。それは、先程置かれたばかりのような新品の様子を見せていて、だが同時に普通はあるわけがない事を知らしめていた。
「何か、入ってる?」
故に、見るからに怪しいそれに、少年は困惑を隠せない。
しかも、中からは、カサカサと音がしている。
更には、「テッテー」という不思議な声もしていた。
「何だろう?」
もそも魔物の類なら、こんな紙の箱等、容易く破って出て来れるはずだ。
しかし、箱の中に居る『何か』は、そんな素振りは全く無い。時折比重が傾く程度で、中を動き回っているだけのようだった。
「虫、とか?」
しかし、虫なら鳴かない。それ以前に、言葉を発しない。
それなのに、たまに「ミャァ」だの「ゴロゴロ」だの言いながら、中の居る何かは箱の中を動き回っているようである。
「――判断し難いな、これ。」
少年はそう呟くと、箱を持って移動し始める。
向かったのは森の外だ。そこで、丸く繰り抜かれた穴の中へ、太陽の光を入れて中をそっと覗いてみた。
「ミャ?」
「――猫?」
そうして、二人の会合は、これが最初だった。
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