8人が本棚に入れています
本棚に追加
箱の中の毛玉――もとい、子猫には、後ろ足が無く。
この為に転がっていたのだろうと、少年は結論を下していた。
「お前、捨てられたのか?」
場所が森の中という、余りにも劣悪な環境に居たため、捨てられたのだろうと思い込み、少年は不憫に感じて連れて帰って来てしまったのだ。
そんな子猫は、前足だけで器用にコロコロと転がる。その毛は純白で、赤い瞳はルビーのようにつぶらだった。
時折、「ミャァ」意外に「ゴロゴロ」とか「テッテー」とか「アッシー」とか、謎な鳴き声を発するが、少年は気にした様子は無い。
更には、普通は猫に赤い目はいないのだが、これにも気付かないでいた。
田舎生まれの田舎育ちという事もあり、後ろ足が無いのもどうせ生まれつきか魔物にかじられたせいだろうと思い込むくらいには、無頓着である。
「ほらほら、ゆっくり飲めって。」
そう言って少年が与えているのは、白い液体だ。
ほんのりと甘い香りのする、一般的にはミルクと呼ばれる代物であるそれを拾ってきた子猫に分け与えて、自身は口にする事無くただじっと見下ろしていた。
「ミ、ミゥ、ミュア。」
飲みながら何やら喋る様子に、少年の口元が自然と緩む。
箱ごと連れて帰って来たが、子猫はその中を寝床にしているらしく、飲み終えると中に入り込んで満足そうに目を閉じて見せた。
程無くして、規則正しい息が聞こえてくる。
「可愛いなぁ。」
元々、動物が好きらしいこの少年。
小さい生き物を前にして、メロメロになるのにはそう時間はかからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!