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飼い始めて一週間。
子猫に不思議な点が見つかった。
「トイレしない。」
糞はおろか、尿すら出さない。
その体の構造も、猫の割には不可思議だ。
丸い。ひたすらに、丸い。そして、そこにくっついたかのようにしてある両脚と目と鼻と口。
「一応、肉球はあるけど……。」
そこには、爪がなかった。押しても出て来ないし、そもそも、不自然な形をしている。無理矢理、それっぽくしたかのようだった。
頭には三角に尖った耳があるが、余り機能していないのか、呼んでもいまいち反応してくれず、滅多に動かない。
「変だなぁ。もしかして、突然変異ってやつ?」
「ミャァ。」
そんな猫もどきとも呼べる者を前にして、少年はうーんと唸る。
風の噂で聞いた、稀にあるらしき形状不完全体というものを思い出しながら。
「あれは確か、目が一つだったり、脚がなかったりするんだっけ?」
あるいは、逆に腕がいっぱいあったりするとかしないとか。
そういったのを一纏めに称して、形状不完全体と村では呼んでいるらしい。
その見た目の奇異さから差別される事も少なく無いが、これらは突然変異だと広く考えられていた。
「うーん。」
膝の上では、大人しくちょこんと鎮座する毛玉。それを撫でながら、彼は唸る。
理由はどうあれ、撫でている毛並みは極上だ。ふわふわでサラサラで、柔らかくて癖も無く、手触りは最高だ。
そんな毛玉を撫でまくりながら、
「ま、いっか。」
少年は、目先の手触りに惑わされて、考える事を放棄していた。
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