8人が本棚に入れています
本棚に追加
白い色は神聖なもの。
赤い瞳は神の御使い。
そんなお伽話に振り回される宗教関係者というのは、もしかすると頭が悪いのかもしれない。
だが、彼等はようやく、本命を探しだした――多分。
「ミャ?」
「こ、これが――っ。」
――それは、非常に小さく、幼体だと思われる姿だったのだが。
「何?何なの?」
警戒するように、少年は子猫だと思っている毛玉を腕に抱きしめる。
そんな彼の腕の中で、毛玉はキョトンとした様子で飼い主である少年を見つめていた。
「ミャー。」
「何と、猫に擬態しておるのか。」
「しかし、前足しかありませんね。」
「そういう個体か?それとも、何かの理由で失ったか?」
「だから、あんたら一体何なんだよ!」
少年の腕の中にあるというのに、毛玉を見てガヤガヤと騒ぐ一団は、非常に煩い。
しかし、少年の言葉に、一人の老人が口を開いた。
「ホッホッホッ。神託は間違いないようじゃのぅ。」
これに、場に緊張が走る。
「神獣に選ばれし者、其は勇者成りて、この世を破滅から救わん。一つの希望の光となりし導き手は、神の身許より真の勇気ある者を選びて、白き姿に赤き瞳を持つ者也――。」
そうして、再び老人が笑う。
「ホッホッホッ。」
これを聞いた少年は、
「はぁ?」
わけがわからない、といった様子で口を開き、
「ミャァ?」
毛玉もまた、理解出来ない、というように揃って口を開いていた。
そうして、笑う老人に有難がる謎の集団と、それに取り囲まれた少年と毛玉の、何とも奇妙な会合が開かれていた。
最初のコメントを投稿しよう!