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「あっつ~……」
「ほらほら先輩早く! あともうちょっとですよ!」
「だったらちょっとは手伝えよ……」
時刻は昼過ぎ。
真夏の太陽が容赦なく降り注ぐ。
空から照りつける日差しと、それによって十二分に熱せられたアスファルトの熱気で、外はこれ以上ないほどの暑さになっていた。
そんな暑さで人通りもまばらになった街を、俺は荷物運びという名の死の行進を強いられていた。
手には500mlの飲み物が24本みっちり詰まった段ボール箱。
その重さだけで気が滅入るが、なによりもこれが自分のものではないということだ。
では、この荷物の持ち主はだれかというと、俺を先導するようにヒラヒラと前を歩く彼女だ。
名前は揚羽(アゲハ)。
俺の大学の後輩だ。
どうして俺が彼女の荷物運びをさせられているのかというと、始まりは朝の電話からだ。
休みの朝だからと、俺が遅めの朝食を食べていると、突然ケータイに揚羽から着信が入った。
出てみると彼女が切羽詰った様子で、家まで来て欲しいと言ってきた。
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