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揚羽は大学の部活の後輩で、一個下になる。
部活の飲み会で、たまたま彼女の隣に座ったことがきっかけで仲良くなり、こうして休日にこき使われるようになった。
仲良く……?
まあ今回の話も別に突っぱねてしまえばいい話なのだが、彼女の生い立ちを聞いて以来、それも出来なくなっていた。
というのも、彼女には親がいない。
産まれた時から乳児院や児童養護施設で過ごし、親を知らないまま育ったらしい。
大学生になっても親に面倒を見てもらえる俺たちと比べて、頼れる誰かが彼女には居ないのだ。
その話を聞いた時、半分は嘘だとはぐらかしていたが、その時初めて見せた寂しげな表情が印象的だった。
それからは、俺は意識的に彼女を気遣うようになり、揚羽の方も俺を積極的に頼るようになっていった。
「まあ、いいけどよ。どうせ暇だったし」
「ありがとーございます!」
そう言って、屈託のない笑顔を浮かべる彼女を見るのが内心好きだ、というのも断れない理由のひとつだが。
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