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彼女が強引に押し付けてきたせいで、口の開いたペットボトルの中身が飛び散った。
自分と荷物にかからないよう、身体を捻って何とか回避したが、ちょうど払い落とすように触れてしまい、揚羽の手を離れたペットボトルが地面に転がってしまった。
「あー!」
慌てて揚羽が拾い上げたが、既に中身の半分くらいがこぼれた後。
もったいないと言いたげな表情で、彼女は地面の染みとペットボトルを見比べていた。
俺のせいじゃないぞと口にしかけたその時、目の前を何かが横切った。
「アゲハチョウだ」
鮮やかな黄色の羽をヒラヒラと優雅に羽ばたかせながら、蝶は吸い込まれるように砂糖水が染み込んだ地面に舞い降り、残った砂糖水を口にし始めた。
よほど美味しかったのか、蝶はゆっくり羽を明け閉めしながら俺たちがそばで見ていることも気にせず吸い続けていた。
「喜べ揚羽。虫さんは気に入ったようだぞ」
「慰めになってませんよ、それ~」
揚羽は俺の慰めに悪態を突きつつも、俺の隣で同じように食事中のアゲハチョウを眺めていた。
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