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遊郭【藤紫】。
江戸時代から平成の今まで続く老舗遊郭で、売るのは男娼と呼ばれる男の身体。
客は業界が幅広く常連ともなれば…財政界の重鎮さえもいる。
絶えず男の喘ぎ声や、女の喘ぎ声が止まない藤紫では、数多の男達が様々な事情で抱かれたり、客の女を抱いていた。
二階、三階は個室の部屋となっており、一階は主に応接室や事務所になっいる。
そんな応接室では…
「はぁ?僕が買われる?しかも…突然今夜にですか?」
青年は意味が分からず、相対する青年に聞き返す。
白髪で腰まである髪を肩に靡かせ、薄い水色の着流しを着た麗しい顔立ちの青年。
筧夏樹(19)。
圧倒的な人気男昌で、お得意様には様々な権力者も居る。
藤紫で住み込みで働きながら大学に通う大学生だ。
「あぁ、そうだよ。買ってくれた社長は若手実業家で大学の学費も全て払ってくれるようだ」
向かい合う美しい青年が笑って答えた。
橙色の髪で短髪、薄い藍色の着流しを着ており煙管を吹かしながら膝を立てた。
藤紫蒼真(30)。
藤紫の店主で夏樹の育ての親。
自身も経営しながら身体を売ることも屡々ある。
「けど…あんまりにもいきなりですよ…」
府に落ちず、夏樹は不満そうに言う。
「いきなりでも…買われたら客の元へ売られる。それが…この世界の習わしだからね」
「受け入れたくなくても…受け入れなければ行けない。君ほどの売れっ子なら尚更ね」
涼しげに蒼真は夏樹に言うと、煙管に火を付けると口に加えた。
「お迎えは表で待ってるから早く行きなさい」
蒼真はクスッと笑い、手をヒラヒラさせて夏樹に言う。
……そんなちょっと遊びに行くような感じで言われても…
夏樹は溜め息をついて蒼真の様子に呆れた。
仕方無く、夏樹は簡単な荷物をハンドバックに入れると…
藤紫の玄関から表に出た。
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