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表に出ると、一人の女性が高級車の前で夏樹を待っていた。
桃色の髪で肩より少し下まである長い髪をツインテールにし、フリルがスカートと長袖の袖に付いた桃色のメイド衣装を着た可愛らしい女性だった。
「貴方が筧夏樹様…ですか?」
女性は夏樹に名前を尋ねる。
「そうですけど…貴方は?」
冷や汗を掻いて、夏樹は女性に尋ねる。
「本日から、旦那様の御命令をうけて夏樹様の身の回りの御世話をする事になりました…メイド兼執事の桃と申します。桃ちゃんとお呼びください」
ニッコリ笑って女性…桃は夏樹に身分と名を名乗った。
「桃ちゃん…ですか?…えっ…でもメイド兼執事って…」
夏樹は疑問に思いぎょっとして…
「はい。こんな格好をしておりますが…性別は男です」
苦笑して桃は夏樹に教える。
「…男…つまり女装趣味があるって事ですよね…」
かなりドン引きして夏樹は桃に言う。
「アハハ…そうなりますね」
苦笑いして桃も乾いた笑みを浮かべる。
「「…」」
二人の間に気まずい空気が流れた。
「取り敢えず…車にお乗りください」
桃は苦笑すると、高級車の後部座席のドアを開けた。
「はっはい…」
苦笑いして夏樹は後部座席へと乗り込み…
「……」
今に至る訳で。
…この桃とかって言う奴…変態…メイドの女装なんかして…頭イカれてんじゃないの?
隣に座る桃を見て夏樹は不機嫌そうに思う。
で…運転手の奴…インテリ眼鏡っぽいし…絶対理屈で物事整理する奴だね。
インテリ野郎は、女も男も同じ…めんどくさい奴ばっかり。
夏樹は眉を潜め、苛立ちながら運転手の顔を見て夏樹判断した。
高級車は、一般道から高速に乗ると… 山梨方面へと向かう。
摩天楼が広がるオフィス街を抜け、幾つかトンネルを潜る度に景色は都会から田舎の景色へと変わり…
山梨県に入ると、富士山が近く見える所で高級車は高速から降り…
山道を走り抜け…暫くして車はいったん止まる。
「ゲートを直ぐに開けますね」
桃は夏樹に言うと、リモコンをポチッと押した。
ガーッと音を立てながら、大きなゲートが開く。
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