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……リモコンで開くゲート…か。青年実業家だか、何だか知らないけど…金持ちはお金使い放題で良いな…
夏樹は目を細め、まだ見ぬ自分を買った奴に侮蔑を含んだ嫌味をたっぷり込めて馬鹿にしながら思う。
「……」
無言で喋ろうとしない夏樹に、桃は心配そうな表情で見詰める。
高級車はゲートを抜け、屋敷の敷地内に入って行く。
屋敷には、広大な日本庭園が広がり、錦鯉が泳ぐ池まであり…かなりの屋敷の広さが伺える。
…議員のオバサンや、大臣のオッサンと変わらない広さだな…。
…まさに金の無駄遣い…僕は身体を売りながら苦労して生きてきたのに……
金ばっかりつかいまくる金持ちの感覚が分からないな…
蔑んだ瞳で外を見詰めながら、夏樹は嫌悪感を露にする。
高級車は広い日本庭園を奥へと進み、やがて大きな屋敷の前で止まった。
「到着しました。夏樹様、お降りください」
桃は先に降りると、後部座席のドアを開けて夏樹に言う。
「…」
無言で夏樹は高級車から降りた。
「夏樹様…申し遅れました。僕は清宮流と申します。運転手を務めさせております。もし、何処かに向かわれるなら…なんなりとお申し付けください」
運転手も窓を開けて、夏樹に名を名乗り頭を下げた。
水色の髪で後ろ髪が長く、灰色のスーツを着た端正な顔立ちの青年だ。
「…どうも」
めんどくさそうに夏樹は一言だけ答えた。
「それでは…夏樹様…屋敷の中へ御案内致しますね」
夏樹の苛立つ態度に、桃は涙目になりながらも屋敷へと案内して行く。
玄関から中に入ると、日本家屋特有の木の臭いが鼻腔を燻る。
「この屋敷は洋館でしたが…日本家屋に建て直して前日に完成したばかりなんです」
桃は出来るだけ、笑顔を浮かべて夏樹に言う。
「金持ちは道楽出来て良いですよね。飽きれば豪邸も建て直しできるし…」
嘲笑うように夏樹は桃に言った。
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