第1話桃ちゃんとの出会い

6/7
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「道楽で建て直した訳では…ございません。建て直したのは…私が…いえ、ちゃんとした理由があって建て直したのでございます」 夏樹の言葉に、桃は傷付きポロポロ涙を流しながら答えた。 「はぁ?道楽以外の何の理由が?大体、僕を買ったのだって愛人か何かにでもするつもりだからでしょう?」 泣いてる桃に、夏樹は迷惑そうに言うと…さっさと前に歩きだす。 「違います…決して社長は…貴方を愛人にする気などありません…私は…社長は…貴方を家族として迎え入れる為に…」 それでも桃は、慌てて夏樹を追い掛けながら言う。 「家族として迎え入れる?馬鹿げた話ですね。言い訳なんて聞きたくありません」 「僕は疲れました。早く部屋に案内してください」 冷たく夏樹は桃に言いきった。 「っ…夏樹様の御部屋は…此方にございます」 桃は涙を流しながら夏樹に言うと、廊下の突き当たりの部屋に案内した。 「御案内どうも。僕は寝るので…誰も部屋に来ないで下さいね」 ピシャンッ 蔑んだ瞳で涙を桃に言い放つと、部屋に入り障子を勢い良く閉めた。 「っ…夏樹…」 桃は泣きじゃくりながら、夏樹の部屋を暫く見詰めた後… 寂しくトボトボ歩きながら茶の間に向かった。 茶の間に着くと、流を含めた四人の青年達が待って居た。 「桃さん…泣いていらっしゃるのですか?」 流は桃に近寄ると、悲痛な表情で桃に言うとポケットからハンカチを取り出し… ソッとハンカチを桃に差し出した。 「うう…ありがとう…」 流に礼を言うと、桃はハンカチで涙を一生懸命に拭う。 「弟君に何か言われたんスか?」 桃に近寄り、心配した顔をして長身の青年が桃に尋ねる。 金髪で短髪、前髪を真ん中に少し分けており、白いシェフの格好をした青年。 熱海炎斗(28)。 左門字コンツェルンの専属シェフで、桃の高校時代からの後輩。 料理の腕はピカイチで、最近は和食料理を研究中。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!