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「道楽で建て直した訳では…ございません。建て直したのは…私が…いえ、ちゃんとした理由があって建て直したのでございます」
夏樹の言葉に、桃は傷付きポロポロ涙を流しながら答えた。
「はぁ?道楽以外の何の理由が?大体、僕を買ったのだって愛人か何かにでもするつもりだからでしょう?」
泣いてる桃に、夏樹は迷惑そうに言うと…さっさと前に歩きだす。
「違います…決して社長は…貴方を愛人にする気などありません…私は…社長は…貴方を家族として迎え入れる為に…」
それでも桃は、慌てて夏樹を追い掛けながら言う。
「家族として迎え入れる?馬鹿げた話ですね。言い訳なんて聞きたくありません」
「僕は疲れました。早く部屋に案内してください」
冷たく夏樹は桃に言いきった。
「っ…夏樹様の御部屋は…此方にございます」
桃は涙を流しながら夏樹に言うと、廊下の突き当たりの部屋に案内した。
「御案内どうも。僕は寝るので…誰も部屋に来ないで下さいね」
ピシャンッ
蔑んだ瞳で涙を桃に言い放つと、部屋に入り障子を勢い良く閉めた。
「っ…夏樹…」
桃は泣きじゃくりながら、夏樹の部屋を暫く見詰めた後…
寂しくトボトボ歩きながら茶の間に向かった。
茶の間に着くと、流を含めた四人の青年達が待って居た。
「桃さん…泣いていらっしゃるのですか?」
流は桃に近寄ると、悲痛な表情で桃に言うとポケットからハンカチを取り出し…
ソッとハンカチを桃に差し出した。
「うう…ありがとう…」
流に礼を言うと、桃はハンカチで涙を一生懸命に拭う。
「弟君に何か言われたんスか?」
桃に近寄り、心配した顔をして長身の青年が桃に尋ねる。
金髪で短髪、前髪を真ん中に少し分けており、白いシェフの格好をした青年。
熱海炎斗(28)。
左門字コンツェルンの専属シェフで、桃の高校時代からの後輩。
料理の腕はピカイチで、最近は和食料理を研究中。
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