第1話桃ちゃんとの出会い

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「……夏樹は金持ちを嫌い見たい…嫌悪している見たいで…冷たいんだ」 桃はハンカチで涙を拭いながら炎斗に答えた。 「桃先輩の弟さんは…ずっと身体を売って学費を自分で稼ぎながら…生活なされて来ましたからね」 「金持ちの強欲さを間近で見て来られたのです…無理もありません」 炎斗の隣に燕尾服を着た青年が近付くと、複雑な表情で言った。 緑色の髪で肩まである長さの髪を後ろに一つに纏めて結わえ、四角い眼鏡を掛けた中世的な顔立ちの青年。 緑苑一葉(27)。 左門字コンツェルンの桃専属執事兼秘書。 炎斗と同じく、桃の高校時代からの後輩。 「心の病…簡単には治せませんよね…きっと…桃と距離を縮めるのにも…恐らく長い時間が掛かりますね…」 一葉の隣に小柄な青年が来ると、悲し気な表情で言った。 黒髪で短髪、左襟に金色のバッチを付けた燕尾服姿の可愛らしい青年。 黒仙恭介(29)。 左門字コンツェルンの桃専属執事長兼万能型総使用人長。 全ての使用人の管理を行い、尚且つ全ての仕事を完璧にこなす。 桃の高校時代からの親友で、流とも同級生。 「恭介の言うとおり…時間は掛かるかも知れないけど…私…頑張るよ」 桃は涙を流しながらも、ガッツポーズをして決意する。 「桃さん…私も微力ながら御協力させて頂きます」 桃の健気さに感動し、涙ぐみながら流も桃に頷く。 「桃先輩っ!!俺もっ!!俺も力になりますっ!!」 男泣きしながら、炎斗は桃に声を上げて言う。 「炎斗先輩はいっつも五月蝿いですね。勿論、私だって協力しますよ」 炎斗の様子に呆れながら、一葉も桃に言って苦笑した。 「皆で協力しましょう。昔みたいに…また夏樹君と桃が仲良くなれますようにね」 穏やかに笑って恭介も頷いた。 「ふぇっ…ひっく…皆…ありがとうっ!!」 「うわっ!?」 「ぐえっ!!」 「もっ桃先輩…」 「アハハ…苦しいよ…」 ギュッ 四人の優しさに、桃は感極まって四人を抱き締める。 流はふらついて、炎斗は首がしまり、一葉は苦しくて青ざめ、恭介は清々しい笑顔でもんくを言った。 こうして夏樹と桃の出会いの夜は更けていく。
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