第2話桃ちゃんと熱を出した僕

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「桃お兄ちゃん…どこ?」 深い霧の中…幼い夏樹は桃を探していた。 「夏樹、俺は此処だよ」 そこへ…探していた桃が現れ夏樹を抱き締める。 「夏樹…ずっと…これからお兄ちゃんは…一緒に居るよ?」 桃は優しく微笑んで夏樹に言う。 「ありがとう…桃お兄ちゃん…」 可愛らしい笑顔で、夏樹は桃に礼を言った。 【クルックーッ!!クルックーッ!!クルックーッ】 「っ!?」 次の瞬間、鳩の目覚まし時計の音が鳴り、桃はハッとして目を醒ました。 「…なんで昔の夢なんて…そっか…夏樹が帰って来たからか…」 桃はぼんやりと天井を見詰め、夢の事を考えるとゆっくりと起き上がった。 「夏樹…お兄ちゃんは……ずっと夏樹に会いたかったんだよ」 部屋の中央に掛けられてた…幼い夏樹と夏樹を抱き上げて笑う自分の肖像画を見て… 泣きそうな表情で悲痛に桃は呟いた。 それから桃は…パジャマを脱ぐと… メイド服に着替え、紺色のストッキングを履いて髪もポニテールし… キュキュッ 「よしっ!!メイド兼執事の桃ちゃん出陣!!」 気合いを入れた桃は、顔をパシッと叩くと奇聞を入れ替えた。 自分の部屋から出ると、真っ先に桃は夏樹の部屋と向かうのだった。 …同じ頃。 「ケホッケホッ…最悪…」 身体の怠さを感じ、目を醒ました夏樹は自分の額を触って目を細める。 ……まさか……風邪引いて熱を出すなんて… 昨日疲れてベッドに入らなかったからだな… 都会と違って…山の中は比較的気温が低い…それが一番災いしたね… 僕とした事か…なんて不様な失態を… 自分のミスに、夏樹は後悔して溜め息をつく。 そこへ… 「お早うございます。メイド兼執事の桃です。夏樹様を起こしに参りました」 「っ!?」 桃に障子越に声を掛けられ、夏樹は思わずドキッとする。 「…夏樹様…?」 返事が無いので、桃は怪訝そうに目を細めた。 「おっ起きてますっ!!部屋には入って来ないでくださいっ!!」 あわてた夏樹は桃に声を張り上げた。
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