第一章 - 好きになったのは人妻二児の母

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 日差しに照らされ続けた車内は不快な蒸し暑さで私達を待ち受けた。  私は、冷房を最大にして冷やしていく。  少し耳障りな音を立て車内を快適な空間に整えられていく。 「食事を作るのって大変ですか?」  助手席にいる岡崎君が尋ねる。 「私? うーん、今は何とも思わないわよ」  私は、彼を一言でいうなら良い子と称する。  単純に私達の年齢差を考えれば、挨拶ができ感謝さえできれば一括りに良い子になるのだろうけど。  人は成長し自分らしさを作り上げていく。  そうすることで感受性と言うのが育ち形になり形成していくのだと思う。私は彼に対して悪い言い方になるけれど、小学校の道徳のような薄い綺麗さでしかない。故に年齢以上に幼い印象を懐いている。 「最近思うんですよ。 母親って凄いなって」  彼は恥ずかしそうに言う。彼は真っ直ぐと前を見ながら続ける。 「いや、一人暮らしをするまで家に帰ればメシがある訳ですよ。学校から帰宅して 『母さんメシ』 って言えば出てきて。まぁ、メシだけに限らないですが」 「でも、普通の事よ?」 「そう、そうなんですよ。多分俺の母さんが特別なわけではないんですよ。毎日、米を研ぐ。めんどくさくってやってられませんよ。マジで」 「ご飯食べている?」 「え、はい。食べてますよ。ほら、学生ですから、基本学食行って、後はコンビニで済みますからね」  私は、十分少しと言う道のりの中、彼の話に耳を傾けた。  大した話をしているわけではない。  彼にとってはちょっとした愚痴だろう。  課題が終わらない。一人の食事は味気ない。彼女が欲しいと。  会話で満たさないと落ち着かない。  そう、言うように。彼が喋り続ける。私はただその声に耳を傾ける。
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