第一章 - 好きになったのは人妻二児の母

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 目の前で新しい服に腕を通し見せびらかす様に回る茜を見ると、買ってよかったと思う。  それはそれで、未来は面白くない。  面白くないから、文句を言う。 「あのねえ、ママ。茜の事甘やかしすぎ」  私には私の言い分があり、茜には茜の言い分があれば、未来にもそれ相応の言い分が存在する。 「あのね、未来ちゃん。ママもちょっと反省する所があるけどね、夏期講習に着て行くお洋服も必要だったし、何よりも凄く似合っているし。未来ちゃんにも今まで買ってあげてきたでしょ? 一緒よ」 「そうだよ、未来ちゃん。未来ちゃんは茜よりお小遣い沢山貰ってるし、お爺ちゃん達だって未来ちゃんのほうが沢山お小遣いあげているの、知ってるもん」 「当たり前でしょ? 私のほうがお姉ちゃんなんだから」 「知ってるよ。いいじゃん、別に。お洋服ぐらい買って貰ったって。それに、ママは未来ちゃんの分も買ってくれたのに一緒に行かなかった未来ちゃんが悪いよ」 「解ったよ。ママ、私お風呂洗ってくる」 「別にいいわよ、茜ちゃんが洗うから。茜ちゃんがお風呂洗ってきなさい」 「えー、まだいいじゃん」 「ダメよ。未来ちゃんがお風呂に入りたいって言うんだから。そういう約束でお洋服を買ってあげたでしょ?」 「あ、ママいいよ。私が洗うよ。そうすれば、茜が着てる洋服は私の物だね。ちょっと、胸が窮屈でエッチな格好になるかもしれないけど……うん、多分大丈夫」 「未来ちゃんのバカ。茜が洗うに決まってるじゃん。お風呂だって、茜が先に入るからね」  茜がリビングから出ていく。 「新しいお洋服汚さないように着替えてからにしなさいね」  うん。と、言う返事が聞こえる。 「映画は面白かった?」 「うん。もう最高。ママも観て来るといいよ」  未来は、私にデートの感想を話す。  言葉の節々から幸せと伝わってくる。  私は二人の娘が可愛くて仕方がない。  娘が楽しいと言うだけで私も楽しくなるし、幸せだと言われたら顔を綻ばさずにはいられない。  夕食時に、茜がお昼の話をして未来を挑発するまで。幸せな空気に包まれる。
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