第一章 - 好きになったのは人妻二児の母

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 高校2年生の未来が学校に登校する。 「いってきまーす」  私は何時もの様に玄関前で声を掛ける。 「気を付けてね」  沢山の意味を込めて送り出す。  娘達が家を出掛ける時に顔を出すことを自分に課している。  それは、朝の忙しい一幕の中でも変わらない。  長女の未来を送り出し、台所に戻る。  どこの家庭でも同じように慌ただしい朝に戻って行く。    三十分後、同じ様に玄関前に顔を出し次女の茜を送り出す。 「ママ、茜、今日は部活だから帰り遅くなると思う」 「あら、そうなの」 「うん。コンクールの締め切りが近いのにさっぱりなんだもん」  何がさっぱりなのか解らないから、昨日の夜にでも話してくれればいいのにとは思う。  頬をぷくっと膨らませる茜に今晩は大好きなミートローフを作ろうと思う。未来はきっと「茜ばっかり」と言うだろう。  今晩の様子を思い私は幸せを感じる。 「じゃ、行ってくるね」  手を振る茜に私は同じ様に手を振り、 「気を付けてね」  と、未来にかけた言葉で送り出す。  二人の娘を送り出した後、食器を洗い洗濯物を干す。  毎日毎日同じ繰り返し。  苦痛か? と聞かれれば、私には答えられない。  ただ、洗濯物を洗わなければ、洗濯物は溜まっていく。何時かは着るものがなくなるだろう。  食器だって同じ、気が付けば使える食器がなくなるだろう。  だから、私は同じことを繰り返す。  愛する二人の娘が過ごし易いように。    
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