第一章 - 好きになったのは人妻二児の母

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 当たり前だ、少しでも賞味期限が先なものを購入するように賞味期限が切れているオバサンの手を取ることはない。  何事にも例外はあるが。  私だって最初からオバサンだったわけではない。当たり前だが。  同級生をガキだと言いながらもクラスの男子に淡い恋心を抱いた少女時代があり、様々な初めてを経験した学生時代。アルバイトをしてお洒落につぎ込み時代の最先端を走り抜け、お酒を覚え、社会人になり、代わり映えのない毎日を過ごし、愛しい男と結婚をし、子供を授かり、母になった。オバサンになり、そしてあれよあれよと老人になっていくだろう。  少女から女性、そして嫁へと成長する中で様々なものにお金と時間を費やした。 自分を磨くために、お洒落に夢中になった。  心を豊かにするために、様々な趣味にも費やした。  自分の為に、総てを費やして生きてきた。  そんな私だけれど、子供を身篭ってからは、自分の為が子供の為に変わっていった。  お酒は飲まなくなったし、お洒落もしない。  仲が良かった友人とも、連絡を取ることもなくなった。  私は、培ったもの一つ一つを捨てていった。  子供の為が自分の時間に変わっていく。  一日の時間が増えたところで私は自分の為だけの時間を持てないだろう。母親と言う生き物がそうなのだと私は思う。  様々なものを切り捨ててきた中で私の中に読書と言う趣味だけが残った。  子供が寝静まり旦那の帰宅を待つそんな時間、本を読み続けた。  岡崎君と私は趣味が同じ。それだけの理由で、親近感を抱き距離が縮まった。  話題が合えば、会話には花が咲く。同じ趣味になれば花が咲き乱れる。  性別も年代も吹き飛ばし 『友達』 と呼ばれる間柄。私は彼を友達だと思っている。
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