第一章 - 好きになったのは人妻二児の母

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 娘達は元気に家を飛び出して行った。    今週出た生ゴミを捨てに私は家出る。  正直嫌な時間だった。  ゴミ捨て場ではきっと、井戸端会議が開かれていると思えば自然と私の歩みは、遅くなる。 「おはようございます。藤井さん」  議長である金本さんに話しかけられる。 「おはようございます。金本さん。佐々木さんに吉岡さんも」  億劫だと思いながらも私は、笑顔を作り三人に挨拶をする。  私はこのまま歩みを止めずに我が家へ戻りたいが、ご近所付き合いも主婦の大事なお務めだから不毛な議会に参加せざるを得ない。 「今ね、御二人とも話していたのですけれども、藤井さんはご存知?」  私が 『何を』 と問う前に佐々木さんが答える。 「藤井さんは、お忙しいみたいですけど朝のニュースでも報道されていたし知っていますよ。女優さんの不倫騒動ぐらい」  ああ、昨晩のニユースでも取り上げられていたし、未来も痛烈な発言をしていた。 「ええ、舞台で御一緒した俳優さんとの事でしたけど……でもあれは、食事に行っただけで、そうと決まったわけでは、ご本人も、否定していましたし」  私の感想としては、限りなく黒に近いグレーでしかない。 「私達は昨日のお昼のテレビで知っているから、藤井さんが知らないことも知っているのよ。舞台の内容が過激だったから、仕事もプライベートも過激になっちゃったのよ。そうよね、吉岡さん」 「えぇ、えぇ、佐々木さんの言う通りですよ。それで、藤井さんも働きだして困ったことになってないか心配。って、話をしていたんですよ」 「そうよ、藤井さん美人だから、男の人がほっとかないでしょ?」 「佐々木さんも吉岡さんも心配しちゃって。こういうことって、どんなに気を付けるって言っても男性主体の話でしょ? 私も心配だわ」 「いえいえ、私の様なオバサンは、誰も相手にしませんよ。でも、心配して下さり有難うございます」  私は、頭を下げる。  円満に生活していくにはご近所付合いを蔑ろにできないことを知っているから。
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