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「そういえば、尾崎さんなんですけどね」
そう、佐々木さんが話題を変えたことで、私はほっと息を吐き出した。
じゃあ、私はここで。なんて言い出した日には、この後三人は私の話題が尽きないだろう。悪口と言う話題で。
「もしかしてまたですか?」
「はい。そうなんです」
私には何のことだかわからない。
「あの、尾崎さんがどうかなさったのですか?」
「本当に藤井さんは知らないの? いくら忙しいとしても、ご近所付合いを蔑ろにしていい訳ではないのですよ? 尾崎さんの話ですね。悪いけども吉岡さん説明して差し上げてもらえる?」
「あ、はい。構いませんよ」
「お願いします」
「尾崎さんの旦那さんは、社長さんだから頻繁に贈り物が届けられているじゃないですか?」
私には、社長だから贈り物が届くかは解らないが、配達員がよく彼女の自宅に訪ねる事は知っているので同意をして続きを促す。
「たまたまなんですけど、トラックが長い間止められている日があったんですよね。で、注意をしてみるとそういう時が何度か在って。そう何度もあると邪推する人が出てくると思うんですよね」
「増して、いつも綺麗な身支度でいらっしゃるでしょ」 私は何も言えない。
言いたくない。
「そう何度もこういう事があると困るのよね。子供の教育もそうですし、住んでいる人達の品位やモラルまで疑われる事ですから」
金本さんがそう統括する。
私はこれで終われる。帰れると思ったが、そうは往かなかった。
「おはようございます」
尾崎さんがごみを持って挨拶をしてくれる。
綺麗な身支度にお化粧も綺麗に施して、やって来た。まるで、このまま何処かに出かける様な装いで。
ごみを捨てるには相応しくない恰好で現れた。
それはタイムリーな登場。
三人はどうだろうか私には解らない。ただ自分と同じ気持ちでないことは確かで、その答えは直ぐにでも訪れる。
私は、席を離れるタイミングを失った。
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