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時は流れて…
昭和46年11月27日の夜10時過ぎのことでありました。
場所は、大三島肥海にあります一時預かりの母子保護施設にて…
施設のみんなが集まる部屋に、事務長はん夫婦と内子の薬問屋『溝端屋』のダンナはんと大番頭はんの君波さんと助産婦さんの奥さまと数人の助産婦さんがいまして、部屋の隅でうつ向いているきょうこを心配そうな表情で見つめていました。
「かわいそうにね…」
「ホンマでんな…」
君波さん夫婦の言葉を聞いていました溝端屋のダンナは、のみかけの山丹正宗をひとくちのんでからこう言いました。
「きょうこをニンシンさせた男は…どこのどこまでボンクラなんだか…きょうこの両親もムカンシンなので…どこのどこまでくさっているのだか…」
そんな時でありました。
きょうこをニンシンさせたよしあきが突然一時預かりの母子保護施設にやって来ました。
よしあきは、派手なシャツとボロボロに破れたジーンズ姿で部屋に入ってきた後にこう言うていました。
「きょうこ…迎えに来たよ…オレ…安定した収入を得られるようになったから迎えに来たよ…入籍をしよう…きょうこ…」
よしあきは、周囲の空気がよどんでいると言うことに気がついていなかったので、キョトンとした表情で『あれれ…どうしたんすっか?』と言いました。
溝端屋のダンナは、よしあきに対して『今ごろになってなにいよんぞ!!』と言いましてすごんで行きました。
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