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「コラオドレ!!オドレはここへ何をしに来たんや!!岩松回漕店のどら息子が何でここへ来たんやと聞いとんや!!」
「岩松回漕店のどら息子って…」
「オドレのことを言よんじゃ(言っているのだ)ボケ!!」
「オレ?」
「よしあき!!オドレはどこのどこまで世間知らずなんだか…部屋の隅で泣いている少女の泣き声はオドレには聞こえてへんみたいだな!!」
よしあきは、部屋の隅でくすんくすんと泣いているマタニティ服姿のきょうこのもとへ行きまして、きょうこに呼び掛けていました。
「きょうこ…きょうこ…なあきょうこ…」
「くすんくすんくすん…くすんくすんくすん…」
「どうして泣いているのだよぉ…きょうこ!!」
「くすんくすんくすん…くすんくすんくすん…」
溝端屋のダンナは、よりキツイ声でよしあきにすごんで行きました。
「オドレみたいなヒヨッコに何ができると言うのだ!!世間知らずのみかけのオドレみたいな男は結婚する資格などないんや!!分かっとんやったら出て行け!!出て行けと命令しているのだ!!命令に従え!!」
溝端屋のダンナの言葉にキレてしまったよしあきは、ワー!!となりましてダンナに殴りかかって行きましたので大騒ぎになってしまいました。
「ああ…よしあきさん…ダンナはんにさかろうたらあきまへんねん!!ダンナはん!!」
「離せ!!離せ!!」
その時でありました。
「ああ!!苦しいよぉ…苦しいよぉ…」
この時できょうこの陣痛が始まりました。
きょうこは、大きな胎(おなか)を抱えてその場に倒れてしまったので、助産婦さんたちがきょうこを助ける態勢に入りました。
「きょうこ!!きょうこ!!きょうこ!!しっかりしろ!!」
よしあきは、何度も繰り返してきょうこを呼んでいました。
【つづく】
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