岡本絵莉花の作文「友人」

4/4
前へ
/8ページ
次へ
2   岡本絵莉花が作文を読み終えると、クラスメートが拍手して、担任の先生がコメントをした。    岡本絵莉花が作文を発表している間中、里村恵理花から終始野次が飛んでいた。  もう一人話題に挙がっていた岡本利佳子は終始黙って聞いていた。よく見るとにやけていた。  大野優斗は彼女の発表を何気ない風に、しかし熱心に聞いていた。恋する乙女みたいに。  そんな優斗の鼓動は、彼女の最後の一言でおかしいくらいに激しくなった。    「私の理想の彼氏は、つつましくて暖かい人!」     ドックドク。もう心臓ドックドク。  いや、待てよ。俺ってつつましいよな。少なくとも図々しくはない。  暖かいと言えなくもないよな、うん。絶対冷たくはないだろう。俺、告白いけるかも。    岡本絵莉花の作文発表を聞いてから、俺の頭の中は大論戦が行われていた。  自分は岡本絵莉花にとって、タイプであるか、タイプではないがアリか、そもそもナシか。    「そもそもナシ」は無いだろう。俺は図々しくないし、冷たくもないから。  自己分析をしてみる。  わりと落ち着いた、つつましい男子だろう。男子の中ではトップレベルにつつましいはずだ。つつましさの塊。暖かいし。冷たくはない。普通に人に親切できるし、相手を気遣うことも人並みに出来る。電車やバスでお年寄りに席譲ったことあるし。  いけるじゃん、俺。告白しちゃおうか。  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加