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4
靴箱に自分宛ての手紙があった。同じクラスの大野優斗からだ。
改まって手紙を出すとかどういうつもりか。読むのは面倒なのだから口で言えよ。
などと思っていても、律儀な岡本絵莉花は手紙を読む。そして読み始めて数秒、彼女は教室へ走った。
「大野っ」
岡本絵莉花が自分の前にいた。心臓バックバク。もうバックバク。俺は恐る恐る、「何でしょうか」って聞いた。
「この手紙長い。直接、端的に言って」
教室中がざわついた。何の手紙だ、まさかラブレターか、なんて皆騒いでいる。
「え、いや、えっと」
「早く!」
教室は一段と騒がしい。俺は意を決して大声で言った。
「好きです。付き合ってください」
「あ、そうなの。でも私彼氏いるから」
一瞬静まる教室。
「おかえり、冷たすぎるでしょっ」
里村が大声で笑うので。
「冷静過ぎるっしょ」
「自分から言わせておいてそれかよ」
「ふてぶてしいなっ」
「ってか、図々しいわ」
皆、口々に言い始めた。
そこでは皆も岡本絵莉花も笑っていたから。
俺もなんか大声で笑った。
「私、図々しいし、冷たいの」
止まない皆の笑い声に紛れて、彼女の声が表面から聞こえた。
「でも、そこも魅力的なんでしょう」なんて聞かれたので
「それはもう、もちろん」
俺は本当にそう思っていたから。
それを聞いて彼女は笑った。素敵な笑顔だった。
その素敵な笑顔は言った。
「彼氏いなかったとしても、あんたはタイプじゃないけどね」
教室中はまだ笑いの中。俺だけが虚空を見つめ呆然としていた。
何も知らない里村が、「よく告ったじゃん!頑張ったな」って、結構強めに俺の背中をバシバシ叩いたから、俺むせた。
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