6.Music festival.-吉澤蛍の場合-

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目覚めると秋良の腕の中にいて、見上げたその先からは規則正しい寝息が聞こえる。 安心できる腕の中。 モゾモゾと体を動かし、より良い場所に納まると微かに聞こえてくる心臓の音に耳を澄ませた。 微睡みながら幸せを噛み締めていると、大きな手が髪を掬う。 丁寧に撫でられると髪の上からキスが落ちてくる。 何度目かの甘い時間。 うっすらと目を開けると秋良の声が聞こえてきた。 「ごめん、起こした?」 「ううん」 そう答えると秋良の胸に顔を埋めた。 「ツンデレ代表」 髪を撫でながら笑っているのが分かる。 「秋も結構イメージ違うよ」 「“も” ってことはツンデレしてる自覚あるんだ」 ─そうじゃない。 興味があるものには興味を示すけど、そうでないものはどうでも良いだけだ。 「ツンデレのつもりは無いけど、秋がそう思うんならそうなのかもね」 「俺はどんなイメージ?」 「表情も対応も、仕事用とプライベート用があるかな」 「よく観察していらっしゃる」 カラカラと笑うと、蛍の頭を掻き回した。 「もう⋯ くしゃくしゃになる!」 「ごめんごめん」 そう言って手櫛で整えると、体を寄せてぎゅっと抱きしめる。 「なんか良いな、こういうの」 「⋯ うん」 「体は?辛くない?」 「大丈夫」 「今日はゆっくりしよう。 明日は打ち合わせ入っているみたいだから」
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