見上げた時

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 夏空は消えてしまった。今はただ黒い夜があるだけ。この町の夜に星はない。月もまだ出ていない。  これは、夏空じゃない。  けれどみんなは見ているだろう。花火が上がる、人の手で作られた、暑苦しいが確かに夏空というものを。  うらやましい。  夏空に憧れた。こんな激しい衝動は、本当に、本当に久しぶりだ。  パジャマを脱いでTシャツとジーンズを履く。花火大会らしい服装じゃないがそんなことは知らない。  行く当てもない。行った後で後悔するかもしれない。  けれど、この胸の高鳴りはどうしようもなかった。  ドアを開ける。むあっと夏のにおいを感じる。花火の音が大きくなる。  夏空に・・・恋する。だから旅に出た。  私は、夏空を探しに、1人で、壮大な旅に出た。
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