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  3  翌日、今日も暑い。  いつもと変らない憂鬱な午前中を過ごす。  午後四時。甲子園球場では第四試合が始まるところだ。  前の試合の敗戦校の球児たちが必死にグローブの袋に甲子園の砂を詰めているさなか、次の試合の選手達が容赦なくベンチだグラウンドだを占拠する。  ――慌ただしいなオイ。どっちかちょっと待とうか。  そんなことをテレビを見ながらぼんやり思う。高校野球のボールを見ると、どうしても自分の剃り上げた頭の手術の縫った痕を思いだす。手鏡を取り、頭の傷をジロジロと見る。 「ハア……やっぱ、ヤバいよコレ」  髪が伸びたとして、どこまでこの傷を隠せるのか? まるで自信がない。  それに縫い目が全部かさぶたになっていて、赤黒い糸で縫ってあるみたいで気持ち悪い。  ――グロテスク。最低。 「ハア……最悪」 『ガラリッ!』 「きゃっ!」  慌てて手鏡を伏せる。そして帽子、帽子……あれ? ない! 「入るぞ!」 「入ってこないで!」  とにかく帽子だ! ……あ! あった!  半身起こして座ったちょうど足元にあったグレーのニット帽をひったくるように拾い上げると、今度は矢のような速度でそれを被る。そして顔を真っ赤にしてとにかく俯く。恥ずかしい。また傷を見られた。 「今日はプリン買ってきたんだ。……一緒に食おうぜ?」 「……」  ダメだ。思考が回らない。この男は何を言っているのか? 「勝手に食べなさいよ!」 「そうか……じゃあ食わせてもらうか」  そう言うと、男はまたどっかから丸イスを持ってきてベッド脇に置いて勝手に座る。  そしてガサゴソ……持ってきた白い箱からプリンを一つ出し、カパッとプラスチックのフタを開けた。 「……ほら」  ――えっ? 「口開けないと、下に落ちるぞ?」  ――――はぁ?
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