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男がすくったスプーンに、黄色いモノがちょんとのっている。
……プリンをひと口、あーんして食べよう。
まるでそう言っているようじゃないか。――そんなバカな。……ありえない。
「………………(ぱくり。……もぐもぐ)」
人間とは不思議な生き物だ。
なぜ口の前に香ばしいスイーツを差し出されると、無意識に口を開けてそれを摂取してしまうのか?
「ほら、はい、あーん」
「……(ぱくり。もぐもぐ)」
またしても不思議だ。なぜふたサジ目まで、あーんしてしまうのか?
不思議……が――ストップ!
「もういい! ってか、何アンタ! 誰? ねえ、誰なの?」
「えっ? もういいのか? コレ、うまいやつだぞ!」
「そういうことじゃないから! アンタ、とにかく誰っ?」
何だよ、お前が食わないなら俺が食うよ……と言ってスプーンをプリンに入れたところで、再度ストップ!
「待った! ダメ、食べないで! それ私がもらうから、アンタ別の食べなさいよ!」
「わかったよ、……じゃあこっちのフルーツゼリーにするわ」
「待って、フルーツゼリーもあるの? ダメ、それももらう!」
何だよ、食いしん坊だな……そう口を尖らせると、さらに、じゃあ冷やしとくから後で食えよ、と言いながら食べかけのプリンを片手に持ち、もう一方の手で床に置いていた白い箱を持ってスクッと立ち上がる。
そして私の横にある冷蔵庫に、ベッドを迂回するようにして向かうと、ガシャッと勝手に開け、箱からフルーツゼリー取り出して、ガサゴソとしまった。
そしてまた食べかけのプリンを大事そうに持ったまま、スタスタと淀みない足取りで戻って来る。
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