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「ほら、プリン全部食っちゃえよ」  そう言って勝手にイスに座ると、食べかけのプリンをスプーンにすくって私の顔の前にズイッとさも当然とばかりに差し出す。  この男、一体何者なのか? ……やたらと馴れ馴れしいし、とにかく強引だ。  それに……あーんして食べさせてくれなくても、上半身は自由に動くんですけど。 「(ぱくり。もぐもぐ)」  食べさせてもらう――という行為は、意外といいものだ。  最初は恥じらいしかなかったが、こうして三口目ともなると、なぜかこっちも堂にいってくる。目を閉じて顎をツンと上げてすまし顔。手は行儀よく膝の上だ。……そう、これはどこぞのお嬢様気分か?  四口、五口……七口目辺りで、プリンが底をつく。 「どうだ? いけるだろう?」 「うん。……まあまあ。……どこの?」 「……さあ、よく知らん」 「プッ……」  ――クッ、……プ、ププ…… 「アハハハハハハハッ! バカじゃないのっ! 知らないって……ドヤ顔で勧めといて知らないって、アホでしょアンタ!」  だはははははは――だめだ、コイツ、真正のバカだわ! 「まあまあ、いいじゃねーかよ! 何かデパ地下行ったらスゴい人だかりができてたんだよ! そこで買ったから絶対ウマいって、信じてたんだ!」  ダメだコイツ、やっぱアホだわ、……わけもわからずに人だかりで買うとかって、無謀にもほどがあるじゃない! 「はいはい、人だかり乙! うまい、うまかったよ、プリン! ……で、どこのだっけ?」 「いや、だから知らねーってば。……からかうなよ」  ちぇっ、今度調べてくるからな――そんな捨て台詞がなんともカワイイ。  ――って、え? カワイイ?  いやいや、私もどうかしてるでしょ? ……誰、コイツ?
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