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「いや、まあその……なんだ。手とか、器用に動かせないんじゃないかと思ってな……余りモンとはいえ、見せびらかすだけじゃかわいそうだから、食べさせるまでがお見舞いだと思ったんだよ。……ダメか?」
余りモン? ……見せびらかす? ……かわいそう? ……食べさせるまでがお見舞い? ――っていうか、手が動かない?
コイツ……許さない。
そんな理由にもなってない理由で、あんな顔から火が出るほどの恥ずかしい行為をしてくれたわけ? ――乙女の純情、踏みにじってくれたわけ?
「……アンタ。今すぐ出ていきなさい」
人間とは不思議な生き物だ。極度の怒りに震える声は、ほとんど発声されない。
――が、なぜかちゃんと相手には伝わるものだ。
「ハ、ハイ……」
そーっと席を立つ岸川。
目をきつくつむり、握りこぶしプルプルな私。強くつむりすぎたか。またもこめかみが痛い。いや、頭もズキズキと痛い。
「し、失礼しました……」
コトリ――なぜ引き戸からそんなカワイイ音がでるのか不思議だが、岸川は半紙を撫でるような繊細な手つきでドアを閉めて出ていった。
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