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「お詫びにこの花、やるよ」 「いらない」 「そう言わずにもらってくれよ。隣りの部屋、花瓶なかったんだよ。……な? 花がかわいそうだろ?」  マジで知るか。ていうか、何勝手に―― 「ちょっと、止めてよ! 何でウチの花瓶の花、捨ててるのよ!」 「いいだろ? もう萎れてるんだから。…………ほら、どうだ、巧いもんだろう?」  アホか。――ただやたらめったら容赦なく花瓶に突き立てただけじゃない。 「アンタねえ……何が巧いもんよ。……だったらせめて雄しべ全部切り落としてよ。……そこにハサミあるでしょ?」 「ハア? 雄しべ? ……何で?」 「受粉しちゃうと、花ってすぐ枯れちゃう! ……そんなことも知らないの?」 「はあー、なるほど。……ひとつ賢くなったわ! ……ありがとよ」  そう言うと、少年はハサミで器用にパチパチと花粉満載の雄しべを切り落とし、またスタスタと歩いて私の横に勝手にスタッと座る。  ――何でそんなに普通に私の病室を動き回れるのよ? ……一体何者? 『パンッ!』 「ちょっと! 花粉が飛ぶでしょ! こんなトコで手を叩かないでよ!」 「悪りぃ、悪りぃ。……手が黄色くなっちゃって」  知るか! ――マジで知るか。  つうか、その花、何よ? ……メチャクチャ匂いキツイよ? ……それ絶対病院に持ってきちゃイケない類の花でしょ?  ううぅぅ……マジでムカつく。……頭にくる。  頭にきすぎて……頭痛い。  目をきつくつむり、両手でこめかみを強く押す。 「……おい、大丈夫かよ? ……ナースコールするか?」 「大丈夫。……アンタが原因だから。……帰って。とにかく帰ってよ!」  強い口調のせいか、少年はすぐに立つと、そのまま回れ右。潔く病室を出ていく。 「まあ、とにかくお大事に。……またな!」  またな、じゃないわよ。……また頭痛起こさせる気か。  助けて、って言ったのに。――何であんなのが来るのよ? 「――最悪」
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