空き缶

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 毎日ぼんやりと歩いていた。ランドセルを背負って毎日学校に通って、友達の話になんとなく合わせて、話したいわけでも、聞きたいわけでもなく、ただひたすら話を聞いて、たまに話す。趣味もよくわからない。  自動販売機が見えた。今日はとても暑い。ポケットには幸い100円玉が入っていた。お金を入れて、何を買おうかと迷った。コーラ、ファンタ、お茶、コーヒー、オレンジジュース……プリン?! 最近の自動販売機はバラエティ豊かだ。見ているだけで面白い。  ふと悲しくなった。缶の中にはそれぞれいろいろなものが入っている。僕には何が入っているのだろう。  誰かがゴミ箱に向って投げた空き缶が、入り切れなかったのか、カランと音を立ててコンクリートの道に落ちた。空き缶の中には何も入っていない。僕はそっと空き缶を広いあげた。  僕はまだ空き缶なんだ……。  僕は悲しくなって泣いていた。空っぽの僕はいつか捨てられてしまうのだろうか。すると近にいたおばあさんが、僕の背中をさすってくれた。 「どうしたんだい?」  僕は悲しみの根源をすべておばあさんに話した。するとおばあさんがにっこりと笑った。 「この自動販売機に並んでいる缶だって、もとは空き缶だったんだよ」  僕はきょとんとした。おばあさんはさらに続ける。 「誰だって初めは空っぽなんだよ。そして、人と触れ合い、いろいろな体験を繰り返す中で中身は満たされていくんだよ」  おばあさんはそっと肩を叩いてくれた。僕はその時何かが心に注がれたような温かい感覚がした。僕はもう空っぽではない気がした。 「ありがとうございました」  僕は涙をふいたて、また前を向いて家に向って走っていた。誰もが空っぽの空き缶から始まる。人は誰もが知らず知らずのうちに旅をしながら、中身を満たしている。それなら僕も……。  だから、僕は旅に出た。
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