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「おかえり」
大学のすぐそばに位置するアパートの二階。そこがおれんちだ
バイト終わりで、時間はすでに23時を過ぎており、さっさと風呂に入って寝ようと思って自室の扉を開けると、そこにはあいつがいた
長い黒髪を後ろでまとめたポニーテール。華奢な体つき。そんな女は世の中ごまんといるだろうが、そいつの顔は、俺が忘れようにも忘れられない人物のそれだった
ボロアパートで、扉と部屋の間に廊下なんてものはないので、開けた瞬間そいつが座布団の上で正座していたもんだから、俺は開口するしかなかった
「お前…なにしてんの?」
目の前の光景に俺は心底驚いた。ああ、驚いたとも。そりゃもう、先日大学の友人がポケモンマスターになると言って大学を辞めちまった時くらいに
「あんたに会いに来たの」
しかし、目の前の女はそんな俺の心境など意に介することもなく、あっけらかんとした口調でそう言った
「どういうこと?」
「しょうゆーこと」
テーブルの上の醤油差しを持って、真顔でそんなことを言う。その醤油差しを割ってやろうかこのやろう。俺のだけど
「おい、まじふざけてないでちゃんと答えろや」
「いや、普通にお邪魔しただけだけど?悪かった?」
「悪いに決まってんだろ。どうやって侵入しやがった」
語気は荒げずに、そう問うと彼女は履いているジーンズのポケットからあるものを取り出して、ぷらぷらと左右にそれを振った
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