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春が好きだ。
光が横顔におちてきて、
毛布に包まれて、ウトウトしているような...
この感覚がとても落ち着く。
やっぱり窓際の一番後ろの席っていいよなあ、
なんて思いながら外を見た。
桜は、これまでの雨と風でもうとっくに散ってしまっていて、
そのせいで道は一面ピンク色になっている。
「滝」
「大河。おはよう」
名前を呼ばれて振り向くと、たった今登校してきた様子の大河がいた。
この大河 修平(おおかわ しゅうへい)とは、去年も同じクラスで、さらに同じ陸上部に所属しているチームメイト同士。
そういう縁があって、今ではいちばん気の許せる友人だ。
「はよ......お前、本当に俺の席好きだな」
「借りてごめんな。日課になっちゃって」
「去年もだし慣れたから良いけどさあ。
...今年も、席替えは戦争だろうな...」
遠い目をしながら大河が言う。
今は出席番号順で、「お」がつく大河がこの席だが、やっぱりいちばんいい席は人気がある。
去年も席替えでは、女子の大半がこの席になりたかったようで、“6”と書かれたクジを取り合って戦争のようになっていた。
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