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夏といえば祭りの終わりに開催される花火大会が楽しみな季節。何時もより少しだけ帰宅が遅くなっても親に文句言われる割合が低くなる。
学校の先生も見回りで来ているが、気が緩んでいるのだろう。酒が飲めないことを生徒に愚痴る教師も中には入る。そして、一声悪さするなよ、と言いながら笑って通り過ぎていく。数メートル進むと、また同じような会話をして、ゆっくりと遠ざかって消えてしまう。
休みに入る前から祭りに行こうと約束していた。アイツは何時も笑顔で俺をいい気分にさせてくれていた。
「祭りの日、晴れるといいね」
下校途中の河原で道草するのが日課だった。自転車を適当に土手に倒し斜面に座る。
「そうだな。花火見ないと夏って感じしないもんな」
毎年盛大に行われる花火の打上げは県外からも人が押し寄せるほど有名だった。
「それに、やっぱり屋台。楽しみだね」
くすっと笑ったアイツの顔は子供の頃から変わらない幼稚さを表していて、本当に嬉しそう。
この顔が好きなんだ、と改めて自覚する。無防備なその顔は俺の中の求める気持ちを高ぶらせる。
伝えたい、でもそうしたことでこの関係が壊れるのが怖かった。だから、一緒にいたいけれど、傍にいることが辛くなってきていた。
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