1,遠い夏の日

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無茶なくらい出しておけば、そのうちの何個かは僕が頷いてくれると。 またまた上目遣いで僕を見つめるその瞳に、僕はまた飽きもせず頷いてしまった。 「・・・・・・。かなり削ってくれたらな」 涼はそんな僕にまたニヤリと笑って、もう一冊のスケジュール表をそっと取り出した。 *―*―*―*―*―* 終業式が終わり、涼に連れ出され図書館へ通うこと三日。 涼の宣言通り、膨大な数の宿題をその三日間で片付けさせられた。 各教科で出されたテキスト達と、自由研究。 一日のほとんどの時間を紙とペンと向き合うことに使うなんて、テスト前にするようなことだと思っていた。 それを、涼はさも楽しげにやってみせるのだから完敗だ。 憔悴仕切って疲れを訴える僕を捕まえて、図書館の隅、窓際の席で涼は嬉々として『夏休みの満足できる遊び方②』を広げ、明日から早速実行に移して行こうと訴えた。 「・・・・・・少しも休ませる気がないな?」 「若者が休みたいなんて言うもんじゃないぞトキ。若いうちは買ってでも苦労しないといけないと聞くだろう?」 「夏休みにわざわざ苦労を買いに行く理由もわからないけど・・・・・・っていうか、涼のこの計画は苦労なのか?」 「バカを言うんじゃない! 最高のバカンスに決まってるわ!」 「あ、そう」 どうして彼女はこうも破天荒なのだろう。 付き合いだす前、それこそ、涼が転校してきたばかりの頃はほとんど口もきかないような生徒だったのに。 今じゃこんなにもアクティブな上にじゃじゃ馬だ。 涼を活発にしてしまったものは、なんなのだろう。 僕だと言われたら、それは、喜んでもいいものなのだろうか。 細く緩められた涼の目と視線が合う。 至極楽しげなその表情に、僕はいつもほだされてしまう。 彼女が楽しいなら、それでいいか。 なんて、甘すぎることを考えて。 結局は涼のこのお転婆に付き合うのだ。 そしてそんな時間を、僕もまた楽しいと感じているなら、何も問題はない。 さて、明日はどこへ行こうか。 図書館の冷房の中、真夏の太陽が燦々と輝く外を眺めて、僕はこっそり笑っていた。  
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