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「本当にごめんな…」
目を丸くする俺に、今度こそ分かっただろ、と言いたげに目を細めて眉を下げた冬樹くん。だけど、
「冬樹くん、謝らないでよ。冬樹くんは何も悪くないじゃん」
「いや、だって、兄貴はすげぇやばいって知ってたのに、こんなになるまで気付かなかったなんて…ごめん」
「だいじょぶだよ…冬樹くん」
「栗島 那乃…」
「大丈夫」
しっかり目線を合わせて、心配ないよ、って頷いた。
できるだけ柔らかく微笑んでみたら、じっと俺を見つめていた冬樹くんが唐突に俺に腕を伸ばして、抱き寄せた。
「わぁっ」
「……」
「わ、わ、冬樹くん、俺鼻の下伸びちゃうっ」
「フッ、何言ってんだよ」
さらに強くなった腕の拘束にあわわわと口から変に戸惑った声が漏れた。
そんな俺をおかしそうに笑う冬樹くんの息が首にかかって擽ったい。
小さく身を捩ると、名前を呼ばれて体が離された。
さっきよりも近い距離で、綺麗な顔が真剣に俺を覗き込んだ。
「栗島那乃」
「な、に…?」
「俺が、兄貴からアンタを守るよ」
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