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「え、何で泣くの…?」
「俺はここで可愛い初カノを作る予定だったんですよ!!!」
見てください!と握りしめていた葉間松高校のパンフレットを突き出す。そこには眉目麗しい女子高生が写っている。思い出してはぁ、と恍惚とした溜め息をつく。
この高校を受験したのは他でもない。このような美人な御姉様を彼女として迎えるためだ。
それだと言うのにこの敷地内には男、男、男。
同室者君は誰かな?ワクワク!とか、思わない。360度周りを見渡しても男しか居ないことに気付いた俺は、一つの仮説を立ててみた。
俺は葉間松高校の場所を間違えてしまったのだと。
その仮説を頭の中で立て終えた頃にはもう、一目散にこの寮の外目指して走り出していた。その勢いたるや、某オジサンがスターを得て並みならぬスピードを出した時のことを彷彿とさせる程である。
そして冒頭のように、玄関で山田さんに止められたら訳だが。
山田さんは近過ぎたのか少し距離をとってくしゃくしゃのパンフレットを凝視すると、ああ、と呟いた。
「それ、3年前のだよ」
「…え」
驚いてパンフレットを見つめる俺に、山田さんは更に残酷な爆弾を落とした。
「うち、二年前から男子校になったんだよ」
「…え?…え、ええええええええ!?」
敷地内に俺の叫び声が響き渡る。いや、嘘だ。精々寮周辺だろう。
とにかく、
お母さん。俺は寮生活初日にして、夢破れたり、無念…でございます。
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