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「―――と、いうわけで、中国より日本にやってきた妖怪九尾の狐は陰陽師である安倍一族によって退治されたと現在に伝わっているのです」
ふーん、九尾の狐ね。
昔はそんな悪い狐だったんだ。
授業で脱線した先生の話に、斜め前の席の彼を見る。
銀色の輝く長い髪。
青く澄んだ瞳。
整った顔はどこからどう見ても人間にしか見えないのに、まさかまさかのその九尾の狐の末裔だったなんて。
「そんなに熱い視線で見つめられると困るな。今すぐにでも、その首にかぶりつきたくなるだろ」
「なっ!?」
「冗談だ」
皮肉げに振り向いて笑うその頭に耳が生えている。
わたしにしか見えない獣耳。
「おまえの命は俺のものだからな」
血の契約を交わしたわたしが17歳になるのをこの九尾の狐は待っている。
九尾の狐の生け贄とするために―――
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