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「あの漫画って、完結したんだっけ」
大人になるにつれて、漫画を読まなくなって、あの少年誌も買わなくなって、その女子生徒と主人公の話がどんな決着を迎えたのかを、知る由もなくなってしまった。
ぼくはポケットをまさぐって携帯を取り出そうとしたところで、やめた。
「今調べても、意味ねえか」
これから、あの女子生徒が出来なかったことを、ぼくがやるのだから、それに、あの漫画。
「名前、忘れちゃったしな」
「じゃあ、私の名前は覚えてる?」
不意な声に、ぼくはとびっきりの声をあげた。ちょっとした叫び声だったと思う。こんな声、しばらく挙げてなかった。
慌てて声の方を振り向いて、絶句する。女の子が一人、柵の向こう側から、柵に寄りかかって、柵越しに、ぼくを見つめていた。
誰だ。女。さっきまで誰もいなかったのに。通報されたのか。警察か何かなのか。柵を掴む白い手。細い指。学校の制服。学生。不法侵入。
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