4人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「混乱。絶句。呆然。六対二対二ってところかな?」
制服の女の子は不敵に笑んで、ぼくの表情の形容を行う。ぼくはというと、こんな所で少女の姿を見るなど、どうも恐怖で自分がおかしくなったんじゃないかと考えたあたりである。
「おかしくなってるのかもね。でもいいんじゃないの」
そのまま続ける彼女を見ながら、ぼくの思考は次のステージへ進む。おかしくなったんじゃなくて、おかしいものが見えるようになったんじゃないのか、つまり、そう、ばかばかしいけれど。
「……おばけ、とか」
直後、言わなきゃよかったと後悔する。女の子が腹部を抱いて破顔。顔を破るにふさわしいまでに笑った。ちょっと失礼なんじゃないかと思うくらいには、笑っている。
「あーあ。酷いなあ。まるで空想大好きな少年だ」
余程面白かったのか、目尻を拭いながら、呼気と共に言う。全てがどうでもよくなってここまで来たはずのぼくは、眉間を中心に、眉を鋭角へ近づける。
「じゃあ、誰なんだよ。お前は。というか、邪魔をしないでくれ」
声を荒げたぼくを見据え、彼女は眼差しを真剣な物にした。凛としていて、圧があった。見た目、顔、服装から見て十七歳前後だろう。二十五歳のぼくとは七つ八つほど離れているはずだ。そんな年下の女の子に圧されるあたり、ぼくはやはり、死ぬ寸前のか弱い人間だ。
最初のコメントを投稿しよう!