あいつ

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 暑かった。 暑かった。 「あっちぃな、ったく」 脳内でボヤいていたのが、思わず漏れた。 ボヤいてから、ため息をひとつついた。  今日は散々だ。 母親が今日は雨だと言い続け、傘を持つまでバイトに行くのを許してくれなかった。 「ほん…っと、うぜえ」 結局雨は降らないまま、今日のバイトは終了。 今は気分転換にとバイト先近くのレンタルショップに行くとこ。 外とは違って、涼しい店内。 18歳以下、お断り。 そののれんを慣れた顔してくぐる俺。 別にヌきたいとかじゃない。 気分、気分。 「っつーか、お気に入りレンタル中だし」 月に一回くらい借りてる、お気に入りの一本がない。 俺と同じ趣味のやつがいる。  俺んちの家族構成は、両親と俺と、兄貴と弟。そんだけ。 可愛い妹が欲しかった。 きっとめちゃくちゃ可愛がった、はず。 なもんだから、お気に入りはロリ系。 (っても、付き合う女は、全然違ったんだけどさ) なんでか年上の女に可愛がられてばかりで、初体験もリードしてもらった方。 けど、なんか妙にがっつかれて、正直引いた。で、別れた。 妹いたら近親相姦する気満々じゃねえけど、なんか可愛いのが気になる。 「しゃあねえから、今日はこっちにすっかな」 パッケージの表だけじゃなく、裏も確認。 「……可愛いな、この子も」 そういい、またのれんをくぐってレンタルをと思った瞬間だった。 「あっ」 高めの可愛い女の子の声。 (って、ここ、エッチなコーナーじゃん) 焦って胸元にぶつかったまんまの声の主を見下ろす。 「……ったぁー」 手のひらで自分の鼻を覆うようにしてうつむくその子に、 「大丈夫か?」 と声をかけて、ぎょっとした。 「あう…。それでなくても鼻、低いのに」 上げられた視線。瞳は涙のせいか潤んでて、一瞬で俺を固まらせた。 「ごめんなさい」 申し訳なさそうに微笑むその子が、似てたんだ。 「ぼく、目が悪くって」 お気に入りの一本のロリ系の女の子に。 そして、なぜかぼくと自分を呼ぶことにも。 「あ、それ借りるの?こないだ借りたやつだ。なかなか面白かったよ」 とか、そっちのモノに慣れた口調もするもんだから余計に。 声までそっくりなそいつは、にっこり微笑んで、俺にこう言った。 「そっち系のでおすすめの、教えてあげようか?」 と。 「ぼくと同じ趣味だったらいいんだけど」 なんて女の子の顔と声で俺を誘った。
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